こんにちは。2021年度CSOラーニング生(派遣先:日本環境教育フォーラム(JEEF)の小林海瑠です。
SOMPO環境財団では、日本のCSOラーニングだけでなく、インドネシアにおいても現地の学生対象にNGOラーニング・インターンシップ・プログラムを実施しています。
9月21日(火)には、日本とインドネシアのラーニング生とでオンライン交流会を開催しました。両国から15名程度の学生が参加し、とても有意義な交流会となりました。
はじめに、日本とインドネシアの学生からそれぞれ自己紹介しました。交流会中は基本的にJEEFインドネシア事務所長の矢田さん、JEEFインターンの春木さんが日本語⇔インドネシア語で通訳してくださいましたが、自己紹介の時間は全員英語で話しました。細かい内容を伝えるにはどうしても通訳が必要になりますが、お互いで楽しめるコミュニケーションのためには、やはり共通の言語で話すことが大事になります。私も、外国語習得の重要性をまた痛感しました。
その次に、日本側、インドネシア側の学生1名ずつからそれぞれのインターンの活動内容についてのプレゼンがありました。
インドネシアからは、ArrizkyさんからBorneo Orangutan Survival Foundationでのインターン活動についての発表がありました。BOS Foundationは、インドネシアでオランウータンの保護・保全を中心に活動している組織です。その中でArrizkyさんはコミュニケーション部門に所属し、オランウータンのことや団体の活動について一般の人々に伝える活動をしています。具体的には、SNSによる発信やZoomによるウェビナーの開催、グッズの販売サイトのデザインなどに取り組まれていたとのことでした。このような活動を通じて、プレゼンのスキルなどを磨くことができたようで、当日のプレゼンやスライドもとても洗練されたものでした。
続いて、みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)ラーニング生の天内さんから発表がありました。 環境についての情報発信を行なっているMELONが、天内さんの興味分野であるSDGsやデザインなどにリンクすると考え、MELONでのインターンを始めたとのことでした。
MELONは1992年の地球サミットを契機に発足した団体で、さまざまなステークホルダーから構成される環境NGOです。MELONは複数の部会に分かれて活動しており、天内さんはその中の「ストップ温暖化センターみやぎ」で活動しています。例えば、「うちエコ診断」という取り組みでは、家庭でのエネルギー使用についての分析を行い、省エネに向けたプランについてのレポートを作成するといった活動があります。
天内さんは、MELONでブログ執筆、イベント運営、教育プログラムへの参加などの活動をされており、持続可能な方法で重要なメッセージを伝えることを目標にしているとのことでした。
プレゼンの後には意見交換会のパートに入りました。特にテーマは設けず、各自が自由に質問をして答えるパートでした。なかなか質問が出ないのではと少し心配していましたがそんなことは全くなく、さまざまな質問が飛び交い、時間内で答えきれないほど賑やかな交流会となりました。
質問の内容は各自のインターンの活動内容のほかに、環境分野に興味を持った理由、大学における気候変動への取り組み、各国に必要な政策など様々な意見が出ました。
一部を紹介すると、
Q:日本では気候変動に対する関心が高く、自分も啓発に取り組んでいるが、インドネシアではどうか?(日本→インドネシア)
A:気候変動対応のボランティア活動を行うものも多いが、一般に気候変動問題への関心はあまり高くない。今後水害の増加などどのような影響が出るか更なる啓発が必要。
Q:プラスティックゴミの削減とマイボトルの普及のため、大学に掛け合って給水ステーションを設置してもらった。日本の大学ではどうか?(インドネシア→日本)
A:そこまでの活動はできていない。今後頑張りたい。
Q:ジャカルタからカリマンタン島へ首都移転が計画され、カリマンタン島の野生動物に深刻な影響が懸念されると聞くが、どう思うか?(日本→インドネシア)
A:首都移転といってもジャカルタをそのまま移転するわけではなく、政府の機能を移転するのみ。ジャカルタの深刻な交通渋滞や大気・水質汚染を考えるとよい政策だと思う。
また、インドネシアの学生から、「子どもへのエンパワーメントというとインドネシアではストリートチルドレンの保護活動が思い浮かぶが日本でも同じか?」など、日本に住む我々とは全く異なったバックグランドの質問が出ました。単なる交流ではなく、そのような両国の課題のギャップやバックグラウンドなどについても学ぶことができた交流会でした。
こうしてできた縁を、ぜひ今後も活用していきたいとと思います。
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。 今回は9月29日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」第3回のレポートを お届けします。 第3回は東京経済大学全学共通教育センター准教授の大久保奈弥さんを講師に迎え、 「サンゴとサンゴ礁生態系の現状」をテーマに講演いただきました。 大久保さんは大学院生時代から長年サンゴの研究を行い、2017年には2つの新しい亜目 (目と科の間に置かれる区分)を提唱されたことで、サンゴの分類学に大きな貢献をされた方です。 講演の合間には自宅で育てているサンゴとのツーショットも見せていただき、全編を通じて サンゴへの愛があふれる講座でした。 講座は、「サンゴとサンゴ礁の違いは?(⇒サンゴ礁はサンゴの死がいが積み重なってできた 地形のこと)」、「サンゴはどんな動物?(⇒イソギンチャクと同じ刺胞動物)」という 問いかけから始まりました。 今回はアンケート機能を活用することで双方向のやり取りが生まれ、受講者の皆さんも講座に 入り込みやすかったのではないでしょうか。 続いて普段はあまり見る機会のない、サンゴの発生の様子、着底から群体として成長する過程、 褐虫藻との共生など、神秘的な画像を交えながらサンゴの生態をご紹介いただきました。 この説明の後、大久保さんの問いは私たち人間とサンゴの関わり方に展開していきます。 「なぜサンゴ(サンゴ礁)を守る必要があるのでしょうか?」 サンゴは、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。生態系を保全することはもちろん、 高波を防ぐ調整効果や観光資源としての文化的な貢献も非常に大きいものです。 (八重山諸島にサンゴがもたらす経済効果は230億円!という試算も。) 海洋国である日本は世界でも特にこの恩恵を大きく受けている国ですが、そのサンゴは 2050年までにはなくなってしまう、という予想もされており、非常に危機的な状況に あります。では、どうすればサンゴを守ることができるのでしょうか。 ここから講演は核心に迫っていきます。日本では「サンゴを復活させるため」に、これまで 多くの時間と資金を「移植」という試みに費やしてきました。自治体や国の事業として行われる 大規模なものから、ふるさと納税やクラウドファンディングを活用したもの、手法も有性・無性 の移植法や再生医療を活用したものなど、多種多様です。 しかし、残念ながらこれらの取り組みはいずれも大きな成果を収めるには至っていません。 「移植したサンゴの9割が死亡」、「19年間、20億円をかけてほぼ成果なし」といった、 ショッキングなデータも紹介されました。 そして、この非常に困難な再生活動をしている横で、埋め立てや空港建設工事により移植した 面積の100倍以上のサンゴが失われています。この再生と破壊のペースを比較すれば、 「移植ではサンゴを復活させることはできない」という結論を逃れることができません。 行政や企業は「サンゴを移植して復活させる!」というプラスの面だけを過剰に喧伝し、 むしろ「再生できるから破壊しても大丈夫」という楽観的な言説を助長しているという指摘は、 私たちにとって非常に重いものでした。 では、私たちがサンゴを守るために何ができるのか?という問いに対して、大久保さんの答えは 明快です。それは「今あるサンゴを守ること」。 サンゴが住める環境をしっかりと守ることができれば、サンゴはちゃんと増えていきます。 講座の最後には、この環境を守るための基準を条例などでしっかりと定め、生物多様性に応じた 開発の優先度をつけることで、サンゴを守ることができる、という力強いメッセージを いただきました。 耳障りのよい情報に流されず、不都合な事実から目を背けない大久保さんのスタンスは、 サンゴの問題に限らず、環境問題に取り組もうとする皆さんの模範になる姿勢と感じました。 参加した皆さんにとっても、多くの刺激を受ける講座となったのではないでしょうか。 今回の講座で、「市民のための環境公開講座」PART1:気候変動とエネルギーの転換は 終了となります。 次回からのテーマは、PART2:企業が取り組むサステナビリティです。 第1弾は10月13日(水)18時から、 「すべての人のKirei Lifestyleへの貢献をめざして」をテーマに、花王株式会社ESG活動推進部 マネジャーの井上紀子さんに講演いただきます。ぜひご視聴ください! <市民のための環境公開講座・お申込み> https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/
SOMPO環境財団・瀬川