こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
今回は11月10日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART2・第3回の レポートをお届けします。
今回はPART2「企業が取り組むサステナビリティ」の第3回ということで、オールバーズ 日本法人マーケティング本部長の蓑輪光浩さんを講師に迎え、「カーボンニュートラルな 世界を目指す、オールバーズ」をテーマに講演いただきました。
オールバーズという企業、皆さんはご存知でしょうか?冒頭でアンケートを取ったところ、 おおよそ2割くらいの方が「知っている」と回答されていました。日本での一般的な認知度は まだこれから、という段階かもしれませんが、海外セレブやトップアスリートを中心に熱狂的な 支持を集めるスニーカーブランドで、これからどんどん耳にする機会が多くなるかもしれません。
オールバーズはアメリカのサンフランシスコで2016年に創業された企業です。元プロサッカー 選手のティム・ブラウン氏と、再生可能エネルギーの専門家、ジョーイ・ズウィリンガー氏という、 まったく専門分野の異なる二人が立ち上げたブランドです。スポンサー付きで派手な装飾の スニーカーに疑問を感じていたティムが、「ミニマルなデザインのウール製の靴を作る」という 着想から、「シンプルに、快適に」をコンセプトに起業をしました。
この靴はシリコンバレーを中心に大ヒットし、TIME誌でも「世界一快適な靴」と称されています。 レオナルド・ディカプリオ、バラク・オバマ、ティム・クックといった錚々たる方たちが愛用 しているブランドということで、2019年に日本に進出した時には大きな話題を呼びました。 実は昨年世界で一番売り上げの多かった店舗は原宿店だったそうです。
オールバーズの大きな特徴として、企業哲学の中心に「サステナビリティ」を据えていることが 挙げられます。オールバーズは「2030年カーボンニュートラル」を目指して(世界の目標 より20年早く!)、「ビジネスの力で気候変動を逆転する」と明言しています。 サステナは儲からない、という風潮が根強くありますが、ビジネスの力でこの常識と行動を変え、 しっかりと収益を上げながら持続可能な世界を実現することを目指しているとのことでした。
その目的を達成するため、ウール素材で洗濯ができる商品づくり(廃棄されないための工夫)、 商品ごとにカーボン・フットプリントを表示する(しかもカーボン・フットプリントが以前の 商品を上回るものは開発しない)、サトウキビ製のソール開発(オープンソース化して競業他社 にもノウハウ提供)、Bコーポレーションの認証取得など、これまでの常識に捉われない、 徹底した取り組みを行っています。
20年先を見据えたサステナビリティの取り組みは、「孫の世代に「何をしていたんだ」と 言われないように」という強い意志で臨んでいる、というお話はとても印象的でした。
講義全体を通じて、企業のミッション、ビジョン、課題、目標、自己認識やターゲットといった すべての要素が非常に分かり易く言語化され、企業内で共有化されていることが伝わってきました。 蓑輪さんからは、「ぜひ店舗に足を運んでほしい、当社のミッションを一番熱く語るのは店舗の スタッフです」とのお話があり、私も一度店舗スタッフの方から話を聞いてみたくなりました。 (実際に店舗スタッフがすばらしい!という参加者からの声もありました。)
サステナビリティを中心に据えながら品質の高い商品で収益をあげ、明確な言葉で目的や課題の 共有が図られている。新しい時代の企業の在り方を教えていただけた講座でした。
今回の講座で、「市民のための環境公開講座」PART2「企業が取り組むサステナビリティ」は 終了となります。
次回からのテーマは、PART3「わたしたちにできる選択」です。
第1回は11月23日(火)13時30分から(※)、「地球にやさしい食を探す旅」をテーマに、 立命館大学・食マネジメント学部教授の天野耕二さんに講演いただきます。 ぜひご視聴ください!
※これまでの講座と開始時間が異なりますのでご注意ください!
<市民のための環境公開講座・お申込み>
https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/
SOMPO環境財団・瀬川
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。 今回は9月29日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」第3回のレポートを お届けします。 第3回は東京経済大学全学共通教育センター准教授の大久保奈弥さんを講師に迎え、 「サンゴとサンゴ礁生態系の現状」をテーマに講演いただきました。 大久保さんは大学院生時代から長年サンゴの研究を行い、2017年には2つの新しい亜目 (目と科の間に置かれる区分)を提唱されたことで、サンゴの分類学に大きな貢献をされた方です。 講演の合間には自宅で育てているサンゴとのツーショットも見せていただき、全編を通じて サンゴへの愛があふれる講座でした。 講座は、「サンゴとサンゴ礁の違いは?(⇒サンゴ礁はサンゴの死がいが積み重なってできた 地形のこと)」、「サンゴはどんな動物?(⇒イソギンチャクと同じ刺胞動物)」という 問いかけから始まりました。 今回はアンケート機能を活用することで双方向のやり取りが生まれ、受講者の皆さんも講座に 入り込みやすかったのではないでしょうか。 続いて普段はあまり見る機会のない、サンゴの発生の様子、着底から群体として成長する過程、 褐虫藻との共生など、神秘的な画像を交えながらサンゴの生態をご紹介いただきました。 この説明の後、大久保さんの問いは私たち人間とサンゴの関わり方に展開していきます。 「なぜサンゴ(サンゴ礁)を守る必要があるのでしょうか?」 サンゴは、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。生態系を保全することはもちろん、 高波を防ぐ調整効果や観光資源としての文化的な貢献も非常に大きいものです。 (八重山諸島にサンゴがもたらす経済効果は230億円!という試算も。) 海洋国である日本は世界でも特にこの恩恵を大きく受けている国ですが、そのサンゴは 2050年までにはなくなってしまう、という予想もされており、非常に危機的な状況に あります。では、どうすればサンゴを守ることができるのでしょうか。 ここから講演は核心に迫っていきます。日本では「サンゴを復活させるため」に、これまで 多くの時間と資金を「移植」という試みに費やしてきました。自治体や国の事業として行われる 大規模なものから、ふるさと納税やクラウドファンディングを活用したもの、手法も有性・無性 の移植法や再生医療を活用したものなど、多種多様です。 しかし、残念ながらこれらの取り組みはいずれも大きな成果を収めるには至っていません。 「移植したサンゴの9割が死亡」、「19年間、20億円をかけてほぼ成果なし」といった、 ショッキングなデータも紹介されました。 そして、この非常に困難な再生活動をしている横で、埋め立てや空港建設工事により移植した 面積の100倍以上のサンゴが失われています。この再生と破壊のペースを比較すれば、 「移植ではサンゴを復活させることはできない」という結論を逃れることができません。 行政や企業は「サンゴを移植して復活させる!」というプラスの面だけを過剰に喧伝し、 むしろ「再生できるから破壊しても大丈夫」という楽観的な言説を助長しているという指摘は、 私たちにとって非常に重いものでした。 では、私たちがサンゴを守るために何ができるのか?という問いに対して、大久保さんの答えは 明快です。それは「今あるサンゴを守ること」。 サンゴが住める環境をしっかりと守ることができれば、サンゴはちゃんと増えていきます。 講座の最後には、この環境を守るための基準を条例などでしっかりと定め、生物多様性に応じた 開発の優先度をつけることで、サンゴを守ることができる、という力強いメッセージを いただきました。 耳障りのよい情報に流されず、不都合な事実から目を背けない大久保さんのスタンスは、 サンゴの問題に限らず、環境問題に取り組もうとする皆さんの模範になる姿勢と感じました。 参加した皆さんにとっても、多くの刺激を受ける講座となったのではないでしょうか。 今回の講座で、「市民のための環境公開講座」PART1:気候変動とエネルギーの転換は 終了となります。 次回からのテーマは、PART2:企業が取り組むサステナビリティです。 第1弾は10月13日(水)18時から、 「すべての人のKirei Lifestyleへの貢献をめざして」をテーマに、花王株式会社ESG活動推進部 マネジャーの井上紀子さんに講演いただきます。ぜひご視聴ください! <市民のための環境公開講座・お申込み> https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/