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2021
11,16
17:34
市民のための環境公開講座 11月10日(水)第6回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]

こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

今回は11月10日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART2・第3回の
レポートをお届けします。



今回はPART2「企業が取り組むサステナビリティ」の第3回ということで、オールバーズ
日本法人マーケティング本部長の蓑輪光浩さんを講師に迎え、「カーボンニュートラルな
世界を目指す、オールバーズ」をテーマに講演いただきました。



オールバーズという企業、皆さんはご存知でしょうか?冒頭でアンケートを取ったところ、
おおよそ2割くらいの方が「知っている」と回答されていました。日本での一般的な認知度は
まだこれから、という段階かもしれませんが、海外セレブやトップアスリートを中心に熱狂的な
支持を集めるスニーカーブランドで、これからどんどん耳にする機会が多くなるかもしれません。

オールバーズはアメリカのサンフランシスコで2016年に創業された企業です。元プロサッカー
選手のティム・ブラウン氏と、再生可能エネルギーの専門家、ジョーイ・ズウィリンガー氏という、
まったく専門分野の異なる二人が立ち上げたブランドです。スポンサー付きで派手な装飾の
スニーカーに疑問を感じていたティムが、「ミニマルなデザインのウール製の靴を作る」という
着想から、「シンプルに、快適に」をコンセプトに起業をしました。



この靴はシリコンバレーを中心に大ヒットし、TIME誌でも「世界一快適な靴」と称されています。
レオナルド・ディカプリオ、バラク・オバマ、ティム・クックといった錚々たる方たちが愛用
しているブランドということで、2019年に日本に進出した時には大きな話題を呼びました。
実は昨年世界で一番売り上げの多かった店舗は原宿店だったそうです。



オールバーズの大きな特徴として、企業哲学の中心に「サステナビリティ」を据えていることが
挙げられます。オールバーズは「2030年カーボンニュートラル」を目指して(世界の目標
より20年早く!)、「ビジネスの力で気候変動を逆転する」と明言しています。
サステナは儲からない、という風潮が根強くありますが、ビジネスの力でこの常識と行動を変え、
しっかりと収益を上げながら持続可能な世界を実現することを目指しているとのことでした。



その目的を達成するため、ウール素材で洗濯ができる商品づくり(廃棄されないための工夫)、
商品ごとにカーボン・フットプリントを表示する(しかもカーボン・フットプリントが以前の
商品を上回るものは開発しない)、サトウキビ製のソール開発(オープンソース化して競業他社
にもノウハウ提供)、Bコーポレーションの認証取得など、これまでの常識に捉われない、
徹底した取り組みを行っています。


20年先を見据えたサステナビリティの取り組みは、「孫の世代に「何をしていたんだ」と
言われないように」という強い意志で臨んでいる、というお話はとても印象的でした。

講義全体を通じて、企業のミッション、ビジョン、課題、目標、自己認識やターゲットといった
すべての要素が非常に分かり易く言語化され、企業内で共有化されていることが伝わってきました。
蓑輪さんからは、「ぜひ店舗に足を運んでほしい、当社のミッションを一番熱く語るのは店舗の
スタッフです」とのお話があり、私も一度店舗スタッフの方から話を聞いてみたくなりました。
(実際に店舗スタッフがすばらしい!という参加者からの声もありました。)

サステナビリティを中心に据えながら品質の高い商品で収益をあげ、明確な言葉で目的や課題の
共有が図られている。新しい時代の企業の在り方を教えていただけた講座でした。

今回の講座で、「市民のための環境公開講座」PART2「企業が取り組むサステナビリティ」は
終了となります。

次回からのテーマは、PART3「わたしたちにできる選択」です。

第1回は11月23日(火)13時30分から(※)、「地球にやさしい食を探す旅」をテーマに、
立命館大学・食マネジメント学部教授の天野耕二さんに講演いただきます。
ぜひご視聴ください!

※これまでの講座と開始時間が異なりますのでご注意ください!

<市民のための環境公開講座・お申込み>

https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/

SOMPO環境財団・瀬川

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2021
11,02
11:59
市民のための環境公開講座 10月27日(水)第5回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

10月27日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART2・第2回の
レポートをお届けします。



今回は株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング代表取締役会長の後藤健市さんを
講師に迎え、「野遊びSDGs」をテーマに講演いただきました。



スノーピークといえば今大人気のキャンプ用品を手掛ける会社というイメージですよね。
講師の後藤さんが代表を務める「スノーピーク地方創生コンサルティング」は、そんな
スノーピークが「地域活性化」「地方創生」事業を手掛けるために2017年に設立した会社です。
各地にある遊休地をキャンパー目線の「遊び場」として捉えなおし、食やアクティビティなどの
ソフト開発も行うことで、新たな魅力を見出す事業を行われています。



後藤さんは非常に「言葉」にこだわりを持った方で、講演の中でも随所になるほど、とうならされる
「言葉遊び」が散りばめられていました。(「競争社会」⇒「共創社会」、「市民」⇒「志民」、
「失敗」⇒「未成功」などなど)
こうした「言葉に想いを込める」という考え方は、幼少期に全盲の祖父と接する中で育まれたそうです。
後藤さんの祖父は目が見えないということで決して後ろ向きにならず、「目が見えない
からこそいろいろなことができる、言葉を大切にできる」と前向きにとらえる方で、その思いを
「愛盲」という言葉で表していたとのこと。
後藤さんもこの思いを受け継ぎ、言葉を大切にすることで、「すべての今を受け入れる」、
「利他主義、未来利益」などといった現在の活動を支える思考に至ったそうです。



講演の中では沢山の美しい自然の風景がスライドに映し出されました。
(今回の講演は総スライド数250枚超!)
しかしこうした美しい景色を見ても、近くに暮らす住民の方たちは「何もない田舎」と表現する
ことが多く、そこに価値を見出すことがなかなかできないそうです。
ここで少し視点を変えて、「余計なものが何もない(=豊かな自然の空間・環境がある)田舎」
と捉えなおすとどうなるでしょうか?



例えば畑の中にパラソルを立て、デッキチェアに座ってワインとチーズを楽しむ、という体験を
提供すると、「まるで南仏プロヴァンスのよう!」とはるばる飛行機に乗って現地に赴く人たちが
多数いるのだとか。(それが北海道の雪原の中であっても!)
地方創生というと、一昔前はいわゆる「ハコモノ(ハード)」頼み、というイメージがありましたが、
このように場所を活かす(ハード&ソフト)発想を持つことで、「場所の価値を上げる」ことが
できるというお話は、非常に納得感のあるものでした。



また、ここで訴えているのが「遊び場」としての価値であるということも重要です。
遊びを求めるのは人間の根源的な欲求で、人間の文化はすべて遊びの中で生まれた(『ホモ=
ルーデンス』)という主張もあるくらいです。
この「遊び場」としての価値を訴求し、地域を活性化することで、SDGsに代表される社会課題の
解決を目指すことが、講演のタイトルでもある「野遊びSDGs」の神髄と言えるでしょうか。




後藤さんからは、「ハードだけではなくソフト面で価値を創出することで、人と人のつながりが
生まれる」という大切な言葉もありました。
人のつながりが生まれることで、その場所は何度も訪れたくなる「第二の故郷」となり、量だけ
を頼りにしない、質を伴った地域活性化を実現することができます。
他にも、世界にとっての日本の魅力、グローバル・バリューやグローバル・エッジを意識する
ことが重要など、講演時間に収まりきらないような熱いメッセージをたくさんいただきました。



過疎化に悩む地域同士が、地域活性化のために国内の限られたパイを奪い合い、「競争」をして
勝ち組・負け組が生まれてしまう…というのは大きな社会課題の一つです。
今回の講演で示された「野遊びSDGs」の考え方には、「競争」を避け「共創」に向かう多くの
ヒントがあったのではないでしょうか。



次回は11月10日(水)18時から、「カーボンニュートラルな世界を目指す、オールバーズ」
をテーマに、オールバーズ日本法人マーケティング本部長の蓑輪光浩さんに講演いただきます。

ぜひご視聴ください!


<市民のための環境公開講座・お申込み>
https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/


SOMPO環境財団・瀬川

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2021
10,05
16:47
市民のための環境公開講座 9月29日(水)第3回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]

こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

今回は9月29日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」第3回のレポートを
お届けします。



第3回は東京経済大学全学共通教育センター准教授の大久保奈弥さんを講師に迎え、
「サンゴとサンゴ礁生態系の現状」をテーマに講演いただきました。



大久保さんは大学院生時代から長年サンゴの研究を行い、2017年には2つの新しい亜目
(目と科の間に置かれる区分)を提唱されたことで、サンゴの分類学に大きな貢献をされた方です。
講演の合間には自宅で育てているサンゴとのツーショットも見せていただき、全編を通じて
サンゴへの愛があふれる講座でした。



講座は、「サンゴとサンゴ礁の違いは?(⇒サンゴ礁はサンゴの死がいが積み重なってできた
地形のこと)」、「サンゴはどんな動物?(⇒イソギンチャクと同じ刺胞動物)」という
問いかけから始まりました。
今回はアンケート機能を活用することで双方向のやり取りが生まれ、受講者の皆さんも講座に
入り込みやすかったのではないでしょうか。



続いて普段はあまり見る機会のない、サンゴの発生の様子、着底から群体として成長する過程、
褐虫藻との共生など、神秘的な画像を交えながらサンゴの生態をご紹介いただきました。

この説明の後、大久保さんの問いは私たち人間とサンゴの関わり方に展開していきます。
「なぜサンゴ(サンゴ礁)を守る必要があるのでしょうか?」



サンゴは、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。生態系を保全することはもちろん、
高波を防ぐ調整効果や観光資源としての文化的な貢献も非常に大きいものです。
(八重山諸島にサンゴがもたらす経済効果は230億円!という試算も。)
海洋国である日本は世界でも特にこの恩恵を大きく受けている国ですが、そのサンゴは
2050年までにはなくなってしまう、という予想もされており、非常に危機的な状況に
あります。では、どうすればサンゴを守ることができるのでしょうか。



ここから講演は核心に迫っていきます。日本では「サンゴを復活させるため」に、これまで
多くの時間と資金を「移植」という試みに費やしてきました。自治体や国の事業として行われる
大規模なものから、ふるさと納税やクラウドファンディングを活用したもの、手法も有性・無性
の移植法や再生医療を活用したものなど、多種多様です。
しかし、残念ながらこれらの取り組みはいずれも大きな成果を収めるには至っていません。
「移植したサンゴの9割が死亡」、「19年間、20億円をかけてほぼ成果なし」といった、
ショッキングなデータも紹介されました。



そして、この非常に困難な再生活動をしている横で、埋め立てや空港建設工事により移植した
面積の100倍以上のサンゴが失われています。この再生と破壊のペースを比較すれば、
「移植ではサンゴを復活させることはできない」という結論を逃れることができません。
行政や企業は「サンゴを移植して復活させる!」というプラスの面だけを過剰に喧伝し、
むしろ「再生できるから破壊しても大丈夫」という楽観的な言説を助長しているという指摘は、
私たちにとって非常に重いものでした。



では、私たちがサンゴを守るために何ができるのか?という問いに対して、大久保さんの答えは
明快です。それは「今あるサンゴを守ること」。
サンゴが住める環境をしっかりと守ることができれば、サンゴはちゃんと増えていきます。
講座の最後には、この環境を守るための基準を条例などでしっかりと定め、生物多様性に応じた
開発の優先度をつけることで、サンゴを守ることができる、という力強いメッセージを
いただきました。

耳障りのよい情報に流されず、不都合な事実から目を背けない大久保さんのスタンスは、
サンゴの問題に限らず、環境問題に取り組もうとする皆さんの模範になる姿勢と感じました。
参加した皆さんにとっても、多くの刺激を受ける講座となったのではないでしょうか。

今回の講座で、「市民のための環境公開講座」PART1:気候変動とエネルギーの転換は
終了となります。

次回からのテーマは、PART2:企業が取り組むサステナビリティです。

第1弾は10月13日(水)18時から、
「すべての人のKirei Lifestyleへの貢献をめざして」をテーマに、花王株式会社ESG活動推進部
マネジャーの井上紀子さんに講演いただきます。ぜひご視聴ください!

<市民のための環境公開講座・お申込み>

https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/


SOMPO環境財団・瀬川

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2021
09,22
17:44
市民のための環境公開講座 9月9日(水)第2回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

今回は9月9日(木)に開催された、「市民のための環境公開講座」第2回のレポートをお届けします。


第2回はサステイナブルエネルギー開発株式会社代表取締役社長の光山昌弘さんを講師に迎え、
「「脱炭素社会」の構築に大いに資する「ISOPシステム」について」をテーマに講演いただきました。



講演は3部構成で、第1部は光山さんのプロフィールや起業に至った経緯、ISOPシステムの
概要や解決する社会課題などについてお話いただきました。



最初にお話しのあったISOPシステムの概要は、非常に衝撃的なものでした。
端的に説明すると、「燃えるものなら何でも分解してバイオ石炭にできてしまう」という装置なのです。
燃えるゴミはもちろん、輸出禁止で大きな問題になっているプラスチックごみ、医療廃棄物、
廃棄食品、畜産糞尿や害獣の死がいまで、すべて「資源」として活用し、バイオ石炭に
変えることができてしまいます。



このバイオ石炭は、石炭と同等のエネルギー密度・撥水性を持っており、石炭の完全代替物
として機能します。
つまり、現在の石炭火力発電所の施設をそのまま利用して発電することができるため、
実質的に石炭火力発電所をバイオマス発電所に転換することができてしまうという仕組みです。

このシステムを活用すれば、温室効果ガスによる地球温暖化問題をはじめ、フードロス問題、
Covid-19により深刻化している医療廃棄物問題、廃棄プラスチック問題、災害時のライフライン確保など、
様々な社会課題が解決できるというビジョンが示されました。

光山さんが起業に至った経緯は、東日本大震災でした。光山さんは2009年にNEDOの事業として
行われていた「下水汚泥を固形燃料として活用する」という事業をきっかけに、震災後の南三陸町で
避難所に浴場を設置する活動に取り組まれていました。
その際、「被災地で発生する大量の廃棄物をエネルギーに転換することができれば、多くの人を
救うことができる」という着想を得て、現在の事業を起こされたとのことです。



第2部では、ISOPシステムの技術的な仕組みについて、説明いただきました。
専門的な内容が多く含まれたため詳細は割愛しますが、難解な内容にも関わらずポイントが
分かり易い、非常に明快な解説をいただけました。
コア技術として「亜臨海水処理」という技術が使用されていること、ISOPシステムのエネルギー
効率の高さや温室効果ガス削減効果など、実証データを交えてお話いただきました。




第3部はISOPシステムがターゲットとする市場規模や製品ラインナップ、今後の開発テーマ
などをお話いただきました。こうした内容が聞けるのも、事業会社を経営されている方の
お話ならではですね。

講演では各部ごとに質疑応答の時間が設けられていましたが、具体的なコストや必要資格などの
導入ハードル、メンテナンスや耐用年数など、非常に実務的な質問が多く、導入を真剣に
検討される方が多くいらっしゃったことが感じられました。
また、被災地で光山さんの設置した浴場を利用されたという方からのコメントもあり、その瞬間
光山さんの表情がふっと和らいだ様子も印象的でした。

なお、無敵のシステムに思えるISOPシステムですが、今後のハードルとしては、資源となる
「不要物」の量の確保、自治体などで採用してもらうための実績の積み上げ、操作の簡易化
(現在はボイラー技士免許と匠の技が必要)や車にも積めるような小型化などが課題として
挙げられていました。

今回の講演、私は途中まで「未来の夢の技術」の話を聞いているのかと思いました。
取り上げられているISOPシステムが、私たちの抱えている社会課題の大半を解決する技術に
思えたからです。そのため、既に実現しているシステムということを聞いて大変驚きました。

大げさかもしれませんが、こういった技術的なイノベーションが積み重なれば2030年、2050年の
脱炭素目標も達成できるのではと、希望を抱かせてくれる講演でした。

次回は9月29日(水)18時から、「サンゴとサンゴ礁生態系の現状」をテーマに、
東京経済大学全学共通教育センター准教授の大久保奈弥さんに講演いただきます。

ぜひご視聴ください!
<市民のための環境公開講座・お申込み>
https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/

SOMPO環境財団・瀬川

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2021
09,08
10:36
市民のための環境公開講座 9月3日(水)第1回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
9月1日(水)18時00より、「市民のための環境公開講座」の通年講座第1回が
開催されましたので、当日の様子をレポートいたします。


第1回は、東京大学未来ビジョン研究センターの髙村ゆかり教授を講師に迎え、
「2050年カーボンニュートラルに向かう世界~気候危機と『変化』の中の地域と企業」を
テーマにお話しいただきました。


講座は、近年の異常気象による多大な人的被害、莫大な経済損失についての説明から
スタートしました。このデータが私たちに示しているものは、気候変動対策は2030年、
2050年までに解決をする「少し先の問題」ではなく、喫緊に迫った、私たちの「いのちと
財産を守る」ための課題だということです。これが同時に、私たちが2050年カーボン
ニュートラルになぜ取り組むか、という答えでもあります。


続いて、先日発表されたばかりのIPCC第6次評価報告書をもとに、現在の気候変動は
人間の活動によってもたらされていること、今後のわたしたちの取り組みにより災害の
頻度・強度が大きく変わるというシミュレーションが示されました。
パリ協定で定められた2℃目標にとどまるか、努力目標とされた1.5℃目標を達成できるかで、
災害の強度や生態系への影響は2倍以上の差があります。そして、1.5℃目標を達成する
ためには、一見不可能にも思える、「2050年にカーボンニュートラルを達成する」という、
急速かつ大規模な取り組みが求められることになります。


日本が掲げた「2030年までに温室効果ガス(GHG)を46%削減する」という目標については、
「今のままでは達成できない」というお話もありました。
実は現在私たちが行っている対策をすべて継続しても、GHGは「増えもしないが減りもしない」
というレベルであり、目標との間には「ギガトンギャップ」が存在しているとのこと。
「なぜ実現不可能に思われる目標を掲げるのか」という問いに対しては、持続可能な未来を
実現するためにどれだけの課題があり、どれほどのイノベーションが求められるか、
私たち全員が共有するための目標である、とのお話がありました。


後半では各国や企業の取り組みをご紹介いただきました。コロナからの復興に気候対策を
織り込む「グリーン・リカバリー」や、域外からの輸入品に炭素排出量に応じた支払を義務付ける
「炭素国境調整措置(CBAM)」など、EUの施策に特徴的なものが多かった印象です。
もちろん、日本でも2030年、2050年に向けて意欲的な目標を掲げる自治体や企業が多くあり、
サプライチェーンや顧客まで含めたカーボンニュートラルを達成するという、日立製作所の
目標などが紹介されました。


気候変動対策に取り組むことは、すでに企業や自治体にとって単なる「環境」問題では
ありません。実際に、近年のESG投資への関心の高まりなどを受け、企業にとっての
気候変動問題は企業価値を左右する「本業の問題」とイコールになっています。
他方、自治体にとっては、気候変動問題に取り組むことで地域を活性化し、災害への
レジリエンスを高めるプラスの側面も秘めているとのお話も印象的でした。
また私たち個人に対しては、足元からの取り組みとして「長く使うもの(家、車など)を
購入する際は、2050年目標に整合的なものを」というお話がありました。
気候変動問題は私たちの「いのちと財産を守る」ための課題であるという強いメッセージ、
そして企業や自治体、個人がこの問題にどう対峙すべきか、2050年に向けた道標を示して
いただくような、今年度第1回にふさわしい講座となりました。

次回は9月15日(水)18時から、
「「脱炭素社会」の構築に大いに資する「ISOPシステム」について」をテーマに、
サステイナブルエネルギー開発株式会社・代表取締役の光山昌弘さんに講演いただきます。
ぜひご視聴ください!
<市民のための環境公開講座・お申込み>
https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/

SOMPO環境財団・瀬川

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