2022 11,02 14:48 |
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こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
第7回は、サントリーホールディングス株式会社チーフスペシャリストの山田健さんを講師に招き、
「企業が取り組むサステナビリティ -「サントリー天然水の森」における生物多様性の意義-」について
お話いただきました。
企業が取り組む社会貢献活動というと、皆さんどんなものをイメージされるでしょうか。
寄付や社員のボランティア(ごみ拾いなど)、文化・芸術活動のスポンサーなどが頭に浮かぶ方が
多いのではと思います。環境分野で言えば植林・植樹などがすぐに思いつくところでしょうか。 では逆に、寄付や社員ボランティアをしている企業と言えば?と聞かれて、個別の企業名が
すぐに思い当たるでしょうか?ほとんどの方は企業名までは出てこないはずです。
このように、企業が熱心に社会貢献活動に取り組んでも、社会の皆さんの印象にはなかなか
残りません。これが企業にとっては非常に悩ましいところで、営利企業ではどうしても費用対効果の
観点が出てきてしまいます。直接収益に繋がらないまでも自社ブランド向上等の効果が見込めれば
よいのですが、その効果もイマイチ、となってしまうと、モチベーションが続かず継続が困難に
なってしまう、というのが多くの企業の実情ではないでしょうか。
前置きが長くなりましたが、今回の講座はまさにそんな企業の皆さんにぜひ視聴してほしい
内容でした。山田さんが勤務されているサントリーホールディングスは、「森林保全活動といえば
サントリー」と真っ先に名前が挙がるブランドを構築されており、20年間に渡る活動で得た豊富な
ノウハウをもとに、生物多様性保全や防災分野に至るまで多大な社会貢献をされている企業です。
講座の冒頭で山田さんから示された大きなヒントは「本業にできるだけ近い分野のテーマを選ぼう」
ということでした。社会貢献活動を続けるためには義務感や正義感だけでは足りない、
「自分たちの事業の生命線となっているものは何か」を指標とすることで、そこにお金を注ぎ込む
意味が生まれ、ステークホルダーへの説得力が生まれる。引いては企業のブランド価値の向上にも
繋がる、というお話です。今回の講座のエッセンスは冒頭のこの部分に凝縮されていたと言っても
サントリーにとっては、その生命線は「良質な地下水を守り育てる」ということでした。
そこで、全国の工場の水源となるエリアで森林整備をはじめ、現在では15府県50箇所で、
約12,000haという広大な面積の森林を管理されています。
20年間をかけて地下水が貯まるメカニズムを解析し、水源として高機能な森はイコール
「生物多様性に富んだ森」「洪水・土砂災害の強い森」であることを突き止めた結果、自社事業の
サントリーの取り組みで特徴的なのは、活動がすべて科学的な調査に基づいていることです。
一見地下水を守ることとは無関係に思える「タカ・ワシの巣作り」、「有機農業の推進」などの活動も、
様々な分野の第一人者と共同研究を行い、PDCAサイクルがしっかりと回っていることで、
説得力を持って周囲を巻き込んでいく様子が非常に印象的でした。
「SDGs経営」や「サステナビリティ経営」を様々な企業が掲げていますが、今回紹介された
サントリーのように本業に根差した活動を行えている企業はまだごくわずかという気がします。
環境問題を解決するために、事業分野からの取り組みは必要不可欠です。世間の評判やESG投資
といった外的な要因に迫られてではなく、内発的な動機による持続的な活動を行うことが企業に
より強く求められていることを再認識させられる講座でした。
「市民のための環境公開講座」は全9回、11月までまだまだ参加者募集中です。
登録をしておけば後で録画視聴もできますので、少しでも興味のある講座がありましたらぜひ以下の
ホームページからお申込みください!
<市民のための環境公開講座・お申込み>
SOMPO環境財団・瀬川 |
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