2021 12,09 16:23 |
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こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
今回は11月23日(火)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART3・第1回の
レポートをお届けします。 今回からは今年度の講座で最後のパートとなる、PART3「わたしたちにできる選択」について、
全3回の講座が行われます。 第1回は「地球にやさしい食を探す旅」のテーマで、立命館大学・食マネジメント学部教授の 天野耕二さんに講演いただきました。 この講演では食を切り口に環境問題について様々なデータを用いてお話をいただきましたが、
その視点は前半と後半で180度異なるものでした。前半は「気候変動の『被害者』として」、 後半は「気候変動の『加害者』として」、食糧問題について触れられています。 前半では直近のIPCC特別評価報告書などを引用しながら、地球温暖化が「食」にどんな影響を
及ぼすかを説明いただきました。分かりやすい例では、豪雨や森林火災による作物被害などが 挙げられます。もう少し長期的な視点に立つと、気候変動により農作物の好適地が変動すること も考えなければいけません。日本でも、気温上昇により北海道などの寒冷地で農業がしやすく なる?ということが最近話題になりましたが、一方で本州の収穫量は減少し、全体としては 単収が下がるというシミュレーション結果が出ているそうです。 また、米の品質低下、病害の増加や低地での洪水リスクなども考慮すれば、やはりネガティブな
影響の方が大きいと言えそうです。農業以外にも、地球温暖化により世界的に水産資源は最大 20%減少、漁獲量も最大24%減少するというシミュレーションが示されました。 この話題は主に「LCA(ライフサイクルアセスメント)」という考え方に則って説明いただき
ました。LCAとは、生産・加工・流通・廃棄など、「食」にまつわるすべての場面でどれだけの 環境負荷が生じているのかを「見える化」する考え方です。 GHG(温室効果ガス)排出量ベースで見ると、「食」に関連したGHG排出量は地球全体の最大 37%を占めると言われ、運輸セクターや産業セクターを超えて、最大のGHG排出源という ことになります。 この考え方は個別の作物にも当てはめることができるため、講演の中では、作物別や収穫時期、
生産の手法や天然or養殖など、様々な切り口で環境負荷の数値比較をしたデータをご紹介 いただきました。 白米のGHG排出の約65%は水田から発生するメタン、外食より中食の方がGHG排出が多い、 国産米を飼料にするより、輸入トウモロコシを使ったほうがGHG排出が少ない、など、 興味深いお話が沢山ありました。 気になる方は財団HPで近日公開のダイジェストでより詳細な内容が見られますので、 ぜひ参照してみてください! 講座では食に関連したGHG排出を削減する手法として、地産地消、旬産旬消、食品ロスの削減、
生産時の肥料削減などが提言されました。 特に食品ロスについては先進国による問題が大きく、昨今話題になっている賞味期限に関する 慣例や過剰生産など、社会のシステムを見直すことが必要であると、改めて実感されました。 「食べる」という私たちにとって最も身近な行為が地球温暖化の最大要因の一つであるという
ことは、とてもショッキングな事実です。しかし翻って考えると、私たち一人ひとりが「食」を 見直すことで、地球温暖化防止に大きな貢献ができるということでもあります。 次回PART3第2回は、12月1日(水)13時30分から、
「流域人として暮らす」をテーマに、水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表の
橋本淳司さんに講演いただきます(※)。 ※講座は既に終了しております。 SOMPO環境財団・瀬川 |
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