2021 12,27 16:53 |
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こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
今回は12月8日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART3・第3回、 今年度最終回となる講座のレポートをお届けします。
今回はPART3「わたしたちにできる選択」の第3回として、食品ロスジャーナリストの
井出留美さん、NPO法人循環生活研究所・理事長の永田由利子さんを講師に迎え、 「食品ロスをなくす方法」をテーマに、対談形式で講演いただきました。 最初のパートでは、井出さんから「日本と世界の食品ロスの現状と対策」について
お話いただきました。一口に「食品ロス」と言っても、国際的には「Food Loss」と 「Food Waste」の2つの概念があります。「Food Loss」は生産から加工、流通までの 過程で発生する食品の廃棄のこと、「Food Waste」は小売・外食・家庭から発生する 食品の廃棄のことです。日本ではこれらをまとめて、「まだ食べられるのに廃棄される 食品」のことを「食品ロス」と呼んでいます。 では、日本ではどれくらいの食品ロスが発生しているのでしょうか。
農水省・環境省の推計によると、年間570万トンの食品ロスが発生しているとのことです。 これは世界で行われている食糧援助量420万トンの約1.4倍、別の表現をすれば、 東京都民が1年間に食べる食品の量と同等ということになります。 食品ロスの内訳は事業者と家庭でほぼ半々ですが、ゴミの処理について考えると、
また違う問題点が浮かび上がってきます。 事業者の出したゴミは産業廃棄物として処理されますが、小売店や家庭から出されたゴミは、 事業系一般廃棄物、家庭ゴミとして「税金で」焼却処分されることになります。 これにかかる費用は年間で2兆円にもなるとか!食品ロスの問題が環境だけではなく、 経済的にも大きな問題となっていることが分かります。 対策として、よく3R(リサイクル、リユース、リデュース)ということが言われますが、
井出さんによれば、最も重要なのは「リデュース(蛇口の元を締める)」ことです。 環境問題への取り組み、というとリユース、リサイクルが注目されがちですが、 発生する廃棄物の量を減らすことが最も有効な対策である、という事実から目を背けては いけません。 廃棄量を減らすための対策としては、店舗で食品廃棄量を計測するという米国の取り組みや、 同じく廃棄量の見える化で成功した京都市の取り組み、韓国での生ごみ従量課金制などの 事例が紹介されました。また、福岡県大木町や宮崎県新富町で行われている、「生ごみ→ 肥料化→食品生産」という食農循環の取り組みは、後段のコンポストにも繋がる事例でした。 続いて、永田さんからは「コンポストを使った楽しい循環生活」と題して、地域に密着した
ローカルフードサイクリングについてお話いただきました。主にコンポストを活用した、 「有機性廃棄物(いわゆる生ごみ)の資源化」を目指す取り組みです。 永田さんは2000年に福岡県でコンポストを活用した堆肥講座を始められてから、
徐々に対象を全国に広げ、指導者育成にも取り組まれています。 講座の受講者は現在までで延べ245万人以上!ということで、非常に精力的に活動を 推進されています。 コンポストの利点は何と言っても、生ごみを入れるだけ、という手軽さにあります。
家庭でも簡単に始めることができ、「食べ物が栄養となり、また次の食べ物となる」という 循環を感じることができます。 永田さんは半径2kmの小さな循環を「自分ゴトで捉えることができる範囲」として、 「ローカルフードサイクリング」を提唱し、地域の住民や企業を巻き込んで活動をされて いるとのことでした。 「市民のための環境公開講座」では、受講者の皆さんに環境問題についての知識を得て
いただくことはもちろんですが、得た知識をもとに「行動」に踏み出していただくことを 大きなテーマとしています。 受講後のアンケートでも、「講座を聞いて何か行動してみようと思いましたか?」という 項目を必ずお聞きしていますが、今回の講座は「行動してみようと思う」と答えた方が 最も多い回となりました。(実は私も受講した日にコンポストを注文しました。) 今年度の講座は今回で終了となりますが、また来年の講座が開講されるまで、本講座を 受講された一人でも多くの皆さんが「行動」の第一歩を踏み出し、それが集まって
大きな力となることを願っております。 それでは、また来年の講座でお会いしましょう! SOMPO環境財団・瀬川 |
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