2022 07,25 17:45 |
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こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
2022年度「市民のための環境公開講座」の第2回が開催されましたので、 大自然を舞台として行われる超長距離レースのことです。講師のお二人が参加
しているレースは最低でも500km、夜間も含めて3日間以上も続くような 過酷な条件がメインだそうで、4人1組のチームで助け合いながら、道なき道を 踏破するレースを数多く完走されています。 ということで、今回の講師は「市民のための環境公開講座」では少し珍しく、 いわゆる「環境問題」の専門家の方ではありません。しかし、お二人のお話には
私たちが「認識から行動へ」踏み出す背中を押してくれるような、力強いメッセージが たくさん込められていました。 今回も私の感想を交えながら、講座の内容をご紹介したいと思います。 先ずは田中陽希さんから、レース中の雄大な自然をとらえた多くの写真とともに、 まさしく「手つかずの自然」の雄大な景色が広がっていました。目の前に迫る高層ビルの
ような氷山、底の見えない湿原、ジャガーの唸り声が響く草原…。 美しくも厳しい自然の中でレースを経験する陽希さんからは、一見正反対とも思える 2つのメッセージが紹介されました。 「手つかずの自然は人間に容赦がない」、しかし「自然の助けがなければ生きられない」。 陽希さんの言葉は飼いならされていない自然の驚異を生々しく伝えてくれます。
ただ、アドベンチャーレースのアプローチはそんな自然を「征服する」ものではないと
感じます。自然の危険にさらされながらも、湧き水で喉を潤し、木の実で栄養を補給し、 その恵みを受けなければ完走することができない、という「共存」「適応」の姿勢こそが この競技の本質なのでは、ということが伝わってくるメッセージでした。 続いて田中正人さんからは、レース活動を通じて感じられている社会課題について、 群馬県でラフティングツアー会社を設立しています。しかし、コロナ禍でレースもツアーも
中止になってしまい活動がままならず、地域の農業や林業を手伝うことで生活の糧を得る
国内林業はまったく採算が取れずに補助金漬けの不健全な状況に陥っていること、
大型機械導入による高コスト体質化とモラルの低下、省エネ住宅義務化による需要の
偏りなど・・・。中でも、国産木材の需要が少ない中で、東南アジアからは森林が消失
してしまうほど大量の木材を輸入しているあべこべの現状は、前回講座で言及された 「自分の国の環境だけ守っても意味がない」という石井さんの言葉を思い出させる内容でした。 お二人の話から共通して感じたのは「体験」の重要性です。レースも林業も実態を肌で 感じた人にしか分からない「何か」があるということが伝わってきました。
本講座でもテーマに掲げているように、環境問題では「頭で理解すること」と「実際に
行動に移すこと」の間に大きな隔たりがあります。このギャップを乗り越えるための 一番の薬は、実は「体験」によって得られる感動や衝撃なのかもしれません。 行動するためにまずは体験を・・・とは堂々巡りのような話になってしまいますが、
難しいことを考えずともアドベンチャーレースに全力で取り組むお二人の姿を見れば、 人知れず多くの人たちが「体験」の場に向かい、行動への一歩を踏み出すきっかけに なるのではと感じます。 環境問題と言えば破壊される自然の惨状に気が滅入るような話も多い中で、前向きに 次回は8月3日(水)18時から、
「伝統知と生態系を活かした防災・減災」をテーマに、京都大学准教授の深町加津枝さんに
講演いただきます。 豊かな自然の恵みと激甚化する自然災害への対応をどのように両立するか、皆さんも一緒に
考えましょう!ご参加お待ちしています! <市民のための環境公開講座・お申込み>
SOMPO環境財団・瀬川 |
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