2021 08,23 14:12 |
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こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
8月21日(土)、2021年度「市民のための環境公開講座」の特別講座が
開催されました。 テーマは「震災後10年の気仙沼の海から、人と自然のつながりを考える」です。 この特別講座は9月1日から始まる全9回の通年講座とは少し趣向を変えたもので、 参加者は20名限定、気仙沼の海とLIVE中継をつなぎ、受講者と講師の双方向の やり取りに重点を置いた、新たな試みとなっています。 講師の畠山信さんは、気仙沼の舞根(もうね)湾で牡蛎漁師として生活しながら、
NPO法人森は海の恋人の副理事長として、自然環境の調査、保全、環境教育などを 幅広く実施されている方です。東日本大震災後は、復旧・復興事業に奔走する傍ら、 震災後の自然環境を生かした環境づくりに取り組まれています。 震災後10年が経過した現在、最前線で復興に取り組まれてきた畠山さんより、 震災で得たもの・失ったものは何か、発災直後に思い描いた未来像は実現できたのか、 様々な取り組みが成功・失敗した原因は何だったのかを語っていただきました。 冒頭、畠山さんご自身の被災経験についてお話がありました。船を守るために
沖合に出たところ、10mの灯台が沈んでしまうような津波に飲まれ、命からがら 陸地まで泳いで生還されたとのこと。淡々とした語り口ですが、壮絶な内容に 息をのむ思いでした。 何もなくなったふるさとを眺めながら、「ここが底辺、町はこれから良くなるという
根拠のない確信があった」という言葉どおり、畠山さんはすぐに復興に向けた 調査を開始されます。 畠山さんの想いは、「震災で2回、自然が破壊される」ことを防ぐこと。海岸に10mの 防潮堤を建て、川をコンクリートの護岸で埋めてしまうことは、自然の生態系を壊す ことでもあります。住民や行政との粘り強い交渉、綿密な調査による理論武装の結果、 畠山さんの活動された舞根地区は、三陸海岸で2カ所だけという、防潮堤なしでの 集落再建を実現されました。 また、震災によって「得たもの」があるというお話も印象的でした。
津波により海水が遡上したことで、舞根湾のほど近くにあった耕作放棄地が新たに 「塩性湿地」に生まれ変わったそうです。 海水と真水が入り混じる環境は非常に貴重なもので、新しく豊かな生態系が育まれて いるとのこと。畠山さんはこの新たな生態系を守るための活動もされており、 これが「復興工事で護岸を壊す」という日本初の取り組みに繋がったのだとか。 当日はこの湿地とも中継を繋ぎ、講座前日に50cmのウナギが見つかったという エピソードが受講者を驚かせていました。 後半は、畠山さんに舞根湾へと船を出していただき、船上で質疑応答の時間です。
受講者からは震災前後の変化について多く質問が集まりましたが、この10年で 漁業インフラはほぼ回復し、昨年は震災前の90%もの生産量を達成されたとのこと。 特殊な器具で海中のプランクトンの様子も見せていただき、豊かな自然が復活して いることが伝わってきました。 全体を通して、「自然の回復力は非常に強い。この力をどう妨げずに活かすか」という
言葉に、本講座の内容が凝縮されていると感じました。 舞根地区の、美しい海と緑に囲まれた現在の姿は、防潮堤や護岸工事で「自然の回復力を 妨げない」ために、畠山さんたちが10年間取り組まれてきたからこそ実現したものです。 そして、自然にとってはある意味短いともいえるこの10年間の取り組みの違いがもたらす、 三陸海岸の他地区との景色の差は非常に衝撃的なものでした。 私たちの日々の営みがどれだけ大きく自然の在り方を変えるのか、多くの示唆をいただく 講座となりました。 9月1日(土)からは全9回の通年講座が開始します。 第1回は「2050年カーボンニュートラルに向かう世界 気候危機と「変化」の中の 地域と企業」をテーマに、髙村ゆかりさんにご講演いただきます。 オンライン・無料講座となっておりますので、ぜひお申し込みください! <市民のための環境公開講座・お申込み> https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/ SOMPO環境財団・瀬川 |
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