こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。
9月21日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」の第5回についてレポートします。
第5回のテーマは、「四国一小さな徳島県上勝町から広がるゼロ・ウェイスト」、
講師は株式会社BIG EYE COMPANY Chief Environment Officerの大塚桃奈さんです。
なんと本講座史上最年少の講師です(23歳)!
今回は上勝町にある「ゼロ・ウェイストセンター」での廃棄物に関する取り組みがテーマとなりますが、
意外なことに大塚さん自身は、上勝町に来る以前にゴミ問題について専門に学んでいたわけでは
ないそうです。元々はファッションに興味があり、留学して勉強もされていたそうですが、
デザインを追求する中でファストファッションに関連した様々な社会課題を目の当たりにし、
サステナビリティの分野に関心を持ったのだとか。そんな時に上勝町のゼロ・ウェイストの取り組みを知り、
ちょうど大学を卒業する年に設立された、ゼロ・ウェイストセンターに就職されています。
そんな大塚さんからは、講座の冒頭でこんな問題提起がありました。
「私たちが日ごろ何気なく使っているものを買うとき、また作るとき、それがゴミになってしまう可能性を
孕んでいることを意識していますか?」
私たちが日々使用している様々なモノは、当然ながら誰かが作ってくれたものです。
また私たちが日々作り出している様々なモノは、誰かが使うためのものです。
こうした「見えない誰か」との関係性に思いを馳せることが、「ゼロ・ウェイスト」の精神に繋がると
大塚さんは話してくれました。それでは、上勝町で大塚さんが取り組んでいるゼロ・ウェイストの
取り組みがどんなものなのか、以下で少しご紹介したいと思います。
ゼロ・ウェイストセンターのある上勝町は、人口1,450人、四国で一番小さな町と言われています。
標高100~500mの山々に55の集落が点在している、山深い町です。
そんな上勝町は、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、「2030年までにゴミに
なるものをゼロにする」ことを宣言しています。
実は上勝町、以前はごみの焼却施設がなく、ほとんどのごみが「野焼き」にされていた地域でした。
しかし法律改正により野焼きができなくなり、導入した焼却炉もダイオキシン規制ですぐに使用禁止に
なってしまう・・・という苦境から、起死回生の対策として生まれたのが上記のゼロ・ウェイスト宣言でした。
つまり、ごみが処理できないのなら、ゴミを出さないようにしよう、という発想の転換です。
具体的な取り組み内容ですが、先ずインパクトがあるのは13種類45分別という、日本一多いと言われる
ゴミの分別方法です。中には「どうしても埋め立てをするもの」「どうしても焼却するもの」という分類が
あるのがユニークですが、ここに至るまでの過程を細かく分類することで、できるだけ多くの「資源化できる
チャンス」を作るための取り組みだそうです。
例えば生ごみはコンポストで肥料化する、不用品は「くるくるショップ」で必要な人に無料提供、その他の
ゴミは住民が自分で「ゴミステーション」に持参し、代わりに「ちりつもポイント」というポイントを付与する
ことで、資源ごみの換金で得た資金を住民に還元する仕組みも作られています。これらの施設が、
大塚さんの働く「ゼロ・ウェイストセンター」の中に備え付けられています。(中にはホテルもあり、
上勝町のゼロ・ウェイスト生活を体験することができます。)
結果として上勝町では、1人あたりが出すゴミの量が全国平均の半分、ゴミ処理にかかる費用は60%削減、
リサイクル率あ80%を達成したそうです。また、こうした取り組みが町のブランド化につながり、資源再生を
活用したビジネスが多く生まれたという効果もあったとか。
最後に、大塚さんからは「ゴミについて考えることは暮らしを整えること」という提言がされました。
モノを買うときに、できるだけ「ゴミにならないものを買う」、捨てる前に「資源として活用できないかを
考える」、こうした問いを自らに投げかける習慣をつけることで、生活の解像度が上がり、新たな豊かさを
手に入れることができるのではないでしょうか。
「市民のための環境公開講座」は全9回、11月までまだまだ参加者募集中です。
登録をしておけば後で録画視聴もできますので、少しでも興味のある講座がありましたらぜひ以下の
ホームページからお申込みください!
<市民のための環境公開講座・お申込み>
https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2022/
SOMPO環境財団・瀬川