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2021
12,16
14:09
市民のための環境公開講座 12月1日(水)第8回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

12月1日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART3・第2回の
レポートをお届けします。
前回から今年度の講座で最後のパートとなる、PART3「わたしたちにできる選択」について、
全3回の講座が行われています。
第2回となる今回は「流域人として暮らす」のテーマで、水ジャーナリスト、アクアスフィア
水教育研究所代表の橋本淳司さんに講演いただきました。

皆さんは、自分がいまどの「流域」に暮らしているかを知っているでしょうか?
また、私たちが生活で使用している「水」はどこから来て、どこに行くのか考えたことが
あるでしょうか?
本講座は、橋本さんのこのような問いかけから始まりました。

講座のタイトルにもなっている「流域」という考え方は、都道府県や市町村などの行政区分で
地域を分ける考え方とは異なり、「どの水源から水を得て生活しているか」という観点で、
私たちの居住する場所を捉えなおすものです。
例えば、群馬県から栃木、千葉、埼玉、東京にまたがる広大な地域は、まとめて「利根川流域」
と考えることができます。(余談ですが、この流域別の地域区分は江戸時代の藩の分け方と
よく似ているそうです。)

SDGsをはじめとする目標は、国際的な課題を共有するという意味ではとても意義深いもの
ですが、目標が大きすぎて日々の生活に落とし込みづらいという側面もあります。
「流域」という単位はより生活に密着したものであるため、この範囲の中で「水」を切り口に
様々な問題に取り組むことで、生活に根差した取り組みがしやすくなり、引いては社会全体の
大きな課題解決につなげることができます。


橋本さんが冒頭に提示したもう一つの問いについてはどうでしょうか。私たちが生活で使用
している「水」と言えば、雨水、水道水、飲料水などが一般的に思い浮かぶと思います。
しかし、実は私たちが日々購入している食料品や衣服なども、生産される過程で非常に多くの
水を使用しています。例えば、肉じゃがに使用する材料だけをとっても、実に1,500リットル以上
の水が使われていることになります(このような考え方を「仮想水」と言います)。
これは、豚肉の生産のために海外で生産された大量の飼料が使われており、その生産過程で
使用する水が含まれると考えるからです。
私たちは自分が思っているより遥かに多くの水を使用して生活していることが分かる、非常に
象徴的な事例でした。

橋本さんからは、企業による水の使用についても問題提起がなされました。例えばアパレル企業
を考えると、私たちが手に取る商品には「水」のイメージがあまりありません。
しかし、その生産過程を考えると、原料となる綿花の生産、染色過程では大量の水を使用している
ことがわかります。しかも、これらは食料の例と同様に海外で生産されていることが多いため、
結果的に国をまたいだ多くの流域に影響を及ぼしているということになります。
水の利用に関しては、企業は①操業リスク、②財務リスク、③法的リスク、④評判リスクなど
様々なリスクをはらんでおり、今後は今まで以上に健全な水の利活用が求められるとの指摘が
ありました。

個人的に非常に重要だと感じたのは、令和3年7月に「流域治水関連法」が改正されたという
お話です。改正前は、法律での治水対策の対象は河川区域に限定されており、主体も河川管理者
と定められていました。しかし、改正後は集水域や氾濫域を含めた「流域」全体での治水を
行うこととされ、主体も流域に所在する自治体・企業・住民(流域人)が担うことになりました。
これからは流域というコミュニティの実態に合わせた管理が必要となり、例えばインフラの
ダウンサイジングや、水田や森林の貯水機能の保全、水力を活用したエネルギーとの連携など、
水を切り口に様々な地域課題に取り組むことが求められることになります。


気候変動などの環境問題は、知識としては危険性を認識しているものの、スケールが大きすぎて
実感を伴いづらい(=行動に繋がりづらい)という課題がついて回ります。
水という、私たちにとって最も身近な自然の恩恵を意識することで、結果的に森林保全、
エネルギー、食糧といった様々な問題の関連に気づくというアプローチは、身近な行動変容を
促すという意味で非常に有効なものに思えました。
「コミュニティとしての流域」の今後の広がりに期待したいと思います。



次回PART3第3回は、12月8日(水)13時30分から、
「食品ロスをなくす方法 日本と世界の食ロス削減最前線」をテーマに、今年度では初めて
となる、対談形式での講座をお届けします。(※)。
講師は食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さん、NPO法人循環生活研究所理事長の
永田由利子さんのお二人です。

※講座は既に終了しております。

SOMPO環境財団・瀬川

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2021
12,09
16:23
市民のための環境公開講座 11月23日(火)第7回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

今回は11月23日(火)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART3・第1回の
レポートをお届けします。
今回からは今年度の講座で最後のパートとなる、PART3「わたしたちにできる選択」について、
全3回の講座が行われます。


第1回は「地球にやさしい食を探す旅」のテーマで、立命館大学・食マネジメント学部教授の
天野耕二さんに講演いただきました。
この講演では食を切り口に環境問題について様々なデータを用いてお話をいただきましたが、
その視点は前半と後半で180度異なるものでした。前半は「気候変動の『被害者』として」、
後半は「気候変動の『加害者』として」、食糧問題について触れられています。

前半では直近のIPCC特別評価報告書などを引用しながら、地球温暖化が「食」にどんな影響を
及ぼすかを説明いただきました。分かりやすい例では、豪雨や森林火災による作物被害などが
挙げられます。もう少し長期的な視点に立つと、気候変動により農作物の好適地が変動すること
も考えなければいけません。日本でも、気温上昇により北海道などの寒冷地で農業がしやすく
なる?ということが最近話題になりましたが、一方で本州の収穫量は減少し、全体としては
単収が下がるというシミュレーション結果が出ているそうです。
また、米の品質低下、病害の増加や低地での洪水リスクなども考慮すれば、やはりネガティブな
影響の方が大きいと言えそうです。農業以外にも、地球温暖化により世界的に水産資源は最大
20%減少、漁獲量も最大24%減少するというシミュレーションが示されました。

後半は一転、食糧が気候変動に及ぼす影響、「加害者としての側面」にスポットライトが
当てられました。これは前半に比べると今まで聞くことの少なかった話題のため、個人的には
大変興味深い内容でした。

この話題は主に「LCA(ライフサイクルアセスメント)」という考え方に則って説明いただき
ました。LCAとは、生産・加工・流通・廃棄など、「食」にまつわるすべての場面でどれだけの
環境負荷が生じているのかを「見える化」する考え方です。
GHG(温室効果ガス)排出量ベースで見ると、「食」に関連したGHG排出量は地球全体の最大
37%を占めると言われ、運輸セクターや産業セクターを超えて、最大のGHG排出源という
ことになります。


この考え方は個別の作物にも当てはめることができるため、講演の中では、作物別や収穫時期、
生産の手法や天然or養殖など、様々な切り口で環境負荷の数値比較をしたデータをご紹介
いただきました。
白米のGHG排出の約65%は水田から発生するメタン、外食より中食の方がGHG排出が多い、
国産米を飼料にするより、輸入トウモロコシを使ったほうがGHG排出が少ない、など、
興味深いお話が沢山ありました。

気になる方は財団HPで近日公開のダイジェストでより詳細な内容が見られますので、
ぜひ参照してみてください!


講座では食に関連したGHG排出を削減する手法として、地産地消、旬産旬消、食品ロスの削減、
生産時の肥料削減などが提言されました。
特に食品ロスについては先進国による問題が大きく、昨今話題になっている賞味期限に関する
慣例や過剰生産など、社会のシステムを見直すことが必要であると、改めて実感されました。
「食べる」という私たちにとって最も身近な行為が地球温暖化の最大要因の一つであるという
ことは、とてもショッキングな事実です。しかし翻って考えると、私たち一人ひとりが「食」を
見直すことで、地球温暖化防止に大きな貢献ができるということでもあります。
多くの方にとって、環境への問題意識を「行動」に移すきっかけをくれるような講座内容
だったのではないでしょうか。

次回PART3第2回は、12月1日(水)13時30分から、
「流域人として暮らす」をテーマに、水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表の
橋本淳司さんに講演いただきます(※)。

※講座は既に終了しております。

SOMPO環境財団・瀬川

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2021
11,16
17:34
市民のための環境公開講座 11月10日(水)第6回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]

こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

今回は11月10日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART2・第3回の
レポートをお届けします。



今回はPART2「企業が取り組むサステナビリティ」の第3回ということで、オールバーズ
日本法人マーケティング本部長の蓑輪光浩さんを講師に迎え、「カーボンニュートラルな
世界を目指す、オールバーズ」をテーマに講演いただきました。



オールバーズという企業、皆さんはご存知でしょうか?冒頭でアンケートを取ったところ、
おおよそ2割くらいの方が「知っている」と回答されていました。日本での一般的な認知度は
まだこれから、という段階かもしれませんが、海外セレブやトップアスリートを中心に熱狂的な
支持を集めるスニーカーブランドで、これからどんどん耳にする機会が多くなるかもしれません。

オールバーズはアメリカのサンフランシスコで2016年に創業された企業です。元プロサッカー
選手のティム・ブラウン氏と、再生可能エネルギーの専門家、ジョーイ・ズウィリンガー氏という、
まったく専門分野の異なる二人が立ち上げたブランドです。スポンサー付きで派手な装飾の
スニーカーに疑問を感じていたティムが、「ミニマルなデザインのウール製の靴を作る」という
着想から、「シンプルに、快適に」をコンセプトに起業をしました。



この靴はシリコンバレーを中心に大ヒットし、TIME誌でも「世界一快適な靴」と称されています。
レオナルド・ディカプリオ、バラク・オバマ、ティム・クックといった錚々たる方たちが愛用
しているブランドということで、2019年に日本に進出した時には大きな話題を呼びました。
実は昨年世界で一番売り上げの多かった店舗は原宿店だったそうです。



オールバーズの大きな特徴として、企業哲学の中心に「サステナビリティ」を据えていることが
挙げられます。オールバーズは「2030年カーボンニュートラル」を目指して(世界の目標
より20年早く!)、「ビジネスの力で気候変動を逆転する」と明言しています。
サステナは儲からない、という風潮が根強くありますが、ビジネスの力でこの常識と行動を変え、
しっかりと収益を上げながら持続可能な世界を実現することを目指しているとのことでした。



その目的を達成するため、ウール素材で洗濯ができる商品づくり(廃棄されないための工夫)、
商品ごとにカーボン・フットプリントを表示する(しかもカーボン・フットプリントが以前の
商品を上回るものは開発しない)、サトウキビ製のソール開発(オープンソース化して競業他社
にもノウハウ提供)、Bコーポレーションの認証取得など、これまでの常識に捉われない、
徹底した取り組みを行っています。


20年先を見据えたサステナビリティの取り組みは、「孫の世代に「何をしていたんだ」と
言われないように」という強い意志で臨んでいる、というお話はとても印象的でした。

講義全体を通じて、企業のミッション、ビジョン、課題、目標、自己認識やターゲットといった
すべての要素が非常に分かり易く言語化され、企業内で共有化されていることが伝わってきました。
蓑輪さんからは、「ぜひ店舗に足を運んでほしい、当社のミッションを一番熱く語るのは店舗の
スタッフです」とのお話があり、私も一度店舗スタッフの方から話を聞いてみたくなりました。
(実際に店舗スタッフがすばらしい!という参加者からの声もありました。)

サステナビリティを中心に据えながら品質の高い商品で収益をあげ、明確な言葉で目的や課題の
共有が図られている。新しい時代の企業の在り方を教えていただけた講座でした。

今回の講座で、「市民のための環境公開講座」PART2「企業が取り組むサステナビリティ」は
終了となります。

次回からのテーマは、PART3「わたしたちにできる選択」です。

第1回は11月23日(火)13時30分から(※)、「地球にやさしい食を探す旅」をテーマに、
立命館大学・食マネジメント学部教授の天野耕二さんに講演いただきます。
ぜひご視聴ください!

※これまでの講座と開始時間が異なりますのでご注意ください!

<市民のための環境公開講座・お申込み>

https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/

SOMPO環境財団・瀬川

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2021
11,02
11:59
市民のための環境公開講座 10月27日(水)第5回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]
こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

10月27日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」PART2・第2回の
レポートをお届けします。



今回は株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング代表取締役会長の後藤健市さんを
講師に迎え、「野遊びSDGs」をテーマに講演いただきました。



スノーピークといえば今大人気のキャンプ用品を手掛ける会社というイメージですよね。
講師の後藤さんが代表を務める「スノーピーク地方創生コンサルティング」は、そんな
スノーピークが「地域活性化」「地方創生」事業を手掛けるために2017年に設立した会社です。
各地にある遊休地をキャンパー目線の「遊び場」として捉えなおし、食やアクティビティなどの
ソフト開発も行うことで、新たな魅力を見出す事業を行われています。



後藤さんは非常に「言葉」にこだわりを持った方で、講演の中でも随所になるほど、とうならされる
「言葉遊び」が散りばめられていました。(「競争社会」⇒「共創社会」、「市民」⇒「志民」、
「失敗」⇒「未成功」などなど)
こうした「言葉に想いを込める」という考え方は、幼少期に全盲の祖父と接する中で育まれたそうです。
後藤さんの祖父は目が見えないということで決して後ろ向きにならず、「目が見えない
からこそいろいろなことができる、言葉を大切にできる」と前向きにとらえる方で、その思いを
「愛盲」という言葉で表していたとのこと。
後藤さんもこの思いを受け継ぎ、言葉を大切にすることで、「すべての今を受け入れる」、
「利他主義、未来利益」などといった現在の活動を支える思考に至ったそうです。



講演の中では沢山の美しい自然の風景がスライドに映し出されました。
(今回の講演は総スライド数250枚超!)
しかしこうした美しい景色を見ても、近くに暮らす住民の方たちは「何もない田舎」と表現する
ことが多く、そこに価値を見出すことがなかなかできないそうです。
ここで少し視点を変えて、「余計なものが何もない(=豊かな自然の空間・環境がある)田舎」
と捉えなおすとどうなるでしょうか?



例えば畑の中にパラソルを立て、デッキチェアに座ってワインとチーズを楽しむ、という体験を
提供すると、「まるで南仏プロヴァンスのよう!」とはるばる飛行機に乗って現地に赴く人たちが
多数いるのだとか。(それが北海道の雪原の中であっても!)
地方創生というと、一昔前はいわゆる「ハコモノ(ハード)」頼み、というイメージがありましたが、
このように場所を活かす(ハード&ソフト)発想を持つことで、「場所の価値を上げる」ことが
できるというお話は、非常に納得感のあるものでした。



また、ここで訴えているのが「遊び場」としての価値であるということも重要です。
遊びを求めるのは人間の根源的な欲求で、人間の文化はすべて遊びの中で生まれた(『ホモ=
ルーデンス』)という主張もあるくらいです。
この「遊び場」としての価値を訴求し、地域を活性化することで、SDGsに代表される社会課題の
解決を目指すことが、講演のタイトルでもある「野遊びSDGs」の神髄と言えるでしょうか。




後藤さんからは、「ハードだけではなくソフト面で価値を創出することで、人と人のつながりが
生まれる」という大切な言葉もありました。
人のつながりが生まれることで、その場所は何度も訪れたくなる「第二の故郷」となり、量だけ
を頼りにしない、質を伴った地域活性化を実現することができます。
他にも、世界にとっての日本の魅力、グローバル・バリューやグローバル・エッジを意識する
ことが重要など、講演時間に収まりきらないような熱いメッセージをたくさんいただきました。



過疎化に悩む地域同士が、地域活性化のために国内の限られたパイを奪い合い、「競争」をして
勝ち組・負け組が生まれてしまう…というのは大きな社会課題の一つです。
今回の講演で示された「野遊びSDGs」の考え方には、「競争」を避け「共創」に向かう多くの
ヒントがあったのではないでしょうか。



次回は11月10日(水)18時から、「カーボンニュートラルな世界を目指す、オールバーズ」
をテーマに、オールバーズ日本法人マーケティング本部長の蓑輪光浩さんに講演いただきます。

ぜひご視聴ください!


<市民のための環境公開講座・お申込み>
https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/


SOMPO環境財団・瀬川

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2021
10,05
16:47
市民のための環境公開講座 9月29日(水)第3回
CATEGORY[市民のための環境公開講座]

こんにちは。SOMPO環境財団の瀬川です。

今回は9月29日(水)に開催された、「市民のための環境公開講座」第3回のレポートを
お届けします。



第3回は東京経済大学全学共通教育センター准教授の大久保奈弥さんを講師に迎え、
「サンゴとサンゴ礁生態系の現状」をテーマに講演いただきました。



大久保さんは大学院生時代から長年サンゴの研究を行い、2017年には2つの新しい亜目
(目と科の間に置かれる区分)を提唱されたことで、サンゴの分類学に大きな貢献をされた方です。
講演の合間には自宅で育てているサンゴとのツーショットも見せていただき、全編を通じて
サンゴへの愛があふれる講座でした。



講座は、「サンゴとサンゴ礁の違いは?(⇒サンゴ礁はサンゴの死がいが積み重なってできた
地形のこと)」、「サンゴはどんな動物?(⇒イソギンチャクと同じ刺胞動物)」という
問いかけから始まりました。
今回はアンケート機能を活用することで双方向のやり取りが生まれ、受講者の皆さんも講座に
入り込みやすかったのではないでしょうか。



続いて普段はあまり見る機会のない、サンゴの発生の様子、着底から群体として成長する過程、
褐虫藻との共生など、神秘的な画像を交えながらサンゴの生態をご紹介いただきました。

この説明の後、大久保さんの問いは私たち人間とサンゴの関わり方に展開していきます。
「なぜサンゴ(サンゴ礁)を守る必要があるのでしょうか?」



サンゴは、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。生態系を保全することはもちろん、
高波を防ぐ調整効果や観光資源としての文化的な貢献も非常に大きいものです。
(八重山諸島にサンゴがもたらす経済効果は230億円!という試算も。)
海洋国である日本は世界でも特にこの恩恵を大きく受けている国ですが、そのサンゴは
2050年までにはなくなってしまう、という予想もされており、非常に危機的な状況に
あります。では、どうすればサンゴを守ることができるのでしょうか。



ここから講演は核心に迫っていきます。日本では「サンゴを復活させるため」に、これまで
多くの時間と資金を「移植」という試みに費やしてきました。自治体や国の事業として行われる
大規模なものから、ふるさと納税やクラウドファンディングを活用したもの、手法も有性・無性
の移植法や再生医療を活用したものなど、多種多様です。
しかし、残念ながらこれらの取り組みはいずれも大きな成果を収めるには至っていません。
「移植したサンゴの9割が死亡」、「19年間、20億円をかけてほぼ成果なし」といった、
ショッキングなデータも紹介されました。



そして、この非常に困難な再生活動をしている横で、埋め立てや空港建設工事により移植した
面積の100倍以上のサンゴが失われています。この再生と破壊のペースを比較すれば、
「移植ではサンゴを復活させることはできない」という結論を逃れることができません。
行政や企業は「サンゴを移植して復活させる!」というプラスの面だけを過剰に喧伝し、
むしろ「再生できるから破壊しても大丈夫」という楽観的な言説を助長しているという指摘は、
私たちにとって非常に重いものでした。



では、私たちがサンゴを守るために何ができるのか?という問いに対して、大久保さんの答えは
明快です。それは「今あるサンゴを守ること」。
サンゴが住める環境をしっかりと守ることができれば、サンゴはちゃんと増えていきます。
講座の最後には、この環境を守るための基準を条例などでしっかりと定め、生物多様性に応じた
開発の優先度をつけることで、サンゴを守ることができる、という力強いメッセージを
いただきました。

耳障りのよい情報に流されず、不都合な事実から目を背けない大久保さんのスタンスは、
サンゴの問題に限らず、環境問題に取り組もうとする皆さんの模範になる姿勢と感じました。
参加した皆さんにとっても、多くの刺激を受ける講座となったのではないでしょうか。

今回の講座で、「市民のための環境公開講座」PART1:気候変動とエネルギーの転換は
終了となります。

次回からのテーマは、PART2:企業が取り組むサステナビリティです。

第1弾は10月13日(水)18時から、
「すべての人のKirei Lifestyleへの貢献をめざして」をテーマに、花王株式会社ESG活動推進部
マネジャーの井上紀子さんに講演いただきます。ぜひご視聴ください!

<市民のための環境公開講座・お申込み>

https://www.sompo-ef.org/kouza/kouza2021/


SOMPO環境財団・瀬川

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